Open Sesame!

日々の観劇の感想や感じたこと

はじめての『ALTAR BOYZ』新宿FACE

 

GOLDチームの千秋楽を終えはやくも一週間以上過ぎたものの、未だ呆然としています。
あの日はあまりにもあまりにも最高で、これがお芝居なのかそれとも本当にALTAR BOYZが来日して我々の魂を救済しにきてくれたのか、もう現実と芝居の境目もわからなくなりながら楽しみました。
来日してくれてありがとうバイバイ東京なんて言わないで~~!って思いながら終演をむかえ、ああそういえばこれはミュージカルだったなと気付く。

でも、終わってみると足取りは軽くビル7F新宿FACEからの階段降りもなんのその、歌舞伎町のど真ん中を晴れやかな気持ちで歩いている自分がいる。

ああ、わたしの魂救済されてる…!

それが私のはじめての『ALTAR BOYZ』でした。

 

思えば2012年に橋本汰斗くんが出演していたことでこの作品を知り、それなら観てみようかなと思いつつも何かしらの理由で結局チケットを買わなかった。今でこそ、その時に観ておけばもっと早くに出会えたのにと思うけれど、こういうのは巡り合わせというものがあるのできっと今の私にこそ必要だったのかもしれない。
その年の半ば頃にRENTに出会い、私が求めていたものはこれだ!と思った。ブロードウェイ、オフ・ブロードウェイというものの凄さを知った。
そして、2016年。
club SLAZYという作品を知って、法月君を知り他の役でも見てみたいしかも真志と共演する、ああそういえばこれ気になってたんだよね観てみよう!という流れでチケットを取った。

2/4に初めてこの作品を観て、あれなんだか思ってたのと違うぞと思いながらも気付けばリピチケの列に並んでいた。
宗教や海外の文化に疎いからしっくりこなかったのかと考えていたのだけれど、なるほど調べてみれば私の思い違い。
なんとなくRENTやbare的なものを想定していたけど、それよりもリトルショップオブホラーズや死霊のはらわたロッキーホラーショー(とまではいかないけど)くらいの感覚で楽しんでいいものだと。
よくわかっていなかったくせにリピチケを買った辺り、理解は及ばずとも魂でこの作品をもう一度観たいと感じていたに違いない。

その二日後の2/7のソワレで二度目の観劇。
ラフに楽しんでいいと思うとまるで違う作品を観ているようだった。ルークの運ぶケーキを乗せたワゴンがキィキィ鳴ることに笑えた。
笑えるけど、だからこそ、そこに見え隠れする哀愁や彼等が抱える傷跡、そして絆。そういったものが鮮明に見えてきた。

二度も観れば満足するだろう。そう思っていたはずなのに、有り難い御縁で手に入った千秋楽のチケットを握りしめ向かった新宿FACE
狭い会場は所狭しと立ち見の観客、熱気が凄くて、ビールが美味しかった。ふと後ろを見るとLEGACYのメンバーが二人。千秋楽らしい特別感を久々に味わった気がする。
ラストということでとにかくみんな気合が入っていた。
普段なら"千秋楽だから特別"というのがあまり好きではないんだけど、ALTAR BOYZという作品に関しては、このミュージカルらしからぬライブ感と相まってとても良い雰囲気だった。

 

幕開けの彼等のシルエットが、今でも思い出せる。

M1のWe Are the Altar Boyzは、はじまりこそ重々しい雰囲気だけど盛り上がってくるとアイドルらしい曲になる。
耳に残るキャッチ―なメロディをもっと聴いていたくて2012年版のCDも買った。でも、今回のキャストでも同じ一曲でいいからCDが出てくれたら嬉しい。
始まった手拍子に思わず目で周囲を見渡して、一緒になって手拍子をした。
日本版のRENTも手拍子はあるし初日や楽こそかなり歓声が上がって盛り上がるけど、こんなにも客席が盛り上がって楽しめる舞台は他に観たことがない!
歌に乗せて客席を煽りながらのメンバー紹介。

おそらくマジョリティ側として描かれているリーダーのマシュー(大山真志)
ゲイでマシューを好きなマーク(法月康平)
不良…ではなくストレスが多いルーク(石川新太)
ヒスパニック系で捨て子のフアン(松浦司)
唯一のユダヤ人であるアブラハム(常川藍里)

アメリカが抱える問題をぎゅっと濃縮したような彼等は、キリスト教の教えを伝え人々の魂を救うべくバンドを組み世界ツアーを行っている最中。
その最終公演がここ、新宿FACE
どうやって救われた魂の数を計測するのかというと、ソウルセンサーDX12という機械を使う!
初回でこの機械を見て気付くべきだった。この作品、ツッコミどころいっぱいで、そこ全部笑っていいんだよってことに(笑)

続いてのM2、Rhythm In Me.
言えることはもう、マークが最高ってことだけです。
「God put the rhythm in me」という歌詞のとおり神は僕の中にリズムを~という流れで、つまりあくまで”リズムを”なんだけど、
マークが「いれてちょうだい」「僕にいれて」と”何を”か明言せず歌うことでちょっとこうアレなダブルミーニングになっているという。
千秋楽ではかなりノリノリで歌ってくれて、あそこまでテンションを持って行ける法月君は凄いし、それに応える観客も凄いと思った。
この作品は会場に観客が入って完成するのだなと実感した。

Church Rulezでは教会ではこうするんだよ、というのを教えてくれる。日本で言うところの神社の参拝法みたいな感覚だろうか。
「Stand up」「Sit down」の掛け合いがとても楽しい曲。
ミサは終了!

その後は彼等がどうやってバンドを組むことになったのか、アルターボーイズの創世記として劇中劇で教えてくれる。
どうやら福音書というものに乗っ取っているらしいのだけど、その辺は詳しくないのでまったくわからない。
マシューが曲を書いているところに「はあい、ましゅー」とやってくるマーク。子どもの頃の二人の掛け合いはとてつもなく可愛い。
「髪型変えた?」「いつもとおなじだよ」「なんだかとっても似合ってるよぉ~」「…ありがとう!!嬉しい!!!」
ここのマークの表情ひとつひとつが素直で愛らしいのと、マシューは子どもの頃から天然で人をたらしていく才能があるんだね(笑)
親しい友人へ一種のラブソングを書いているというマシューに期待するものの、その相手はキリストでがっかりするマークに、特に気にするふうでもなく「歌詞、いっしょにかんがえてほしい」なんて言って服の 裾を掴んじゃう。笑顔でうなずくチョロいマークお嬢様。マークは小さい頃から少しおませさんで、マシューは(今も)おにぶさん。
そこへルークがやってきて、さらにフアンもやってくる。フアンは教会の前に捨てられていた捨て子で、スペイン語訛りの英語…もとい関西訛りの日本語を喋る。すごくうまいなと思うのは、フアンのラテン系らしさと大阪出身者のオープンで明るい感じが見事にマッチしていて、そのあたりの微妙な雰囲気というものが(移民等は抜きにしても)感覚で伝わりやすいとこ ろ。
最後にやってきたのはユダヤ人のアブラハム。「ユダヤ人がキリスト教の教会に入っていいのぉ?」というマークの言い方が凄く嫌な感じで…笑
けれど、最終的に泣いてしまった(泣かせた?笑)アブラハムも仲間にしてマシューの書いた曲の歌詞づくりに参加させたりと、マークも悪い子ではない。
他4人とは空気が違うアブラハムが仲間に加わったことで、彼らに神のお告げが。

「バンド トゥギャザー」

神のお告げを聴いている最中に、マークはこそこそとマシューの隣へ移動し大きな音がするたびにお尻を触ったり、果ては背中に乗ってみたり(笑)
そして、ゴスペル調のThe Callingはあまりにも綺麗な曲なので初見時はうっかり涙が出てきてしまいました。天井から携帯がぶらさがってきたり、今時は神様のお告げも携帯電話からくるんだねっていうふざけた要素がありつつも(笑)本当に本当に美しい曲。
マークパートの「街を歩いてると除け者の気分」が切なくなるけど、その後の「やり直せるさ」を笑顔で歌ってくれるのが嬉しい。
ルークパートの高音でジーザスからの~と引っ張って歌って行くところは本当に心が洗われるような綺麗さ。

神の起こした奇跡の物語を教えてくれるThe Miracle Song.
ルークにお腹をもみもみされるマシューが可愛かったし、その後ルークをひょいっと抱き起すマシューがかっこよすぎる。

急に子ども向け番組の曲のようになるEverybody Fitsでは、みんな手にひつじのパペットをつけていて可愛い。
アブラハムだけ黒いひつじ。ひとりだけ違うアブラハム。でも、だいじょうぶ。
容姿、人種、なんでもだいじょうぶ、みんなを励ましてくれる優しい曲。
いわゆるマイノリティ側であるマークが「みんな愛し合える家族」と歌うことの意味。
マークとアブラハムの羊が顔を見合わせる姿を見ていると、明るい曲なのに胸に来る、上手く言葉にできないけどすごく幸せな気分になれる曲です。
パペットの口が大きく開く真志マシューがパペットとそっくりに見えてくる不思議(笑)
みんな仲間、いつもファミリー。

そして、この後は懺悔の時間。
座席に置いてある懺悔カードに観客が書いた懺悔内容を読んでくれる。
個人的に面白かったのは2/4の「毎回拍手がズレる」に対するメンバーがやってくれるだけで有り難い!と言っている言葉に同意して頷いて「どんどんズレちゃって」と言ったマーク(笑)
2/7は懺悔カードを読む前にマークが「読むわね」「…読むわよ?」とマシューを何度か見て「太ると…」と読み始め「なんで俺のこと見たんだよ!?」「読むわよ、っていう意味よ」のやりとりw
太ると口の中も太る、という内容に「誰かこの気持ちわかる人いるかしら?」と白々しく聞いたマークw
千秋楽は最初の方の罪の重さが重度だったので、すかさず「だめね」と言ったマークが面白かった(笑)アブラハムの”神社”発言がなかなかに爆弾でした。

最後の懺悔は、童貞を捨てるか捨てないか、に悩む男性から。こちらは日替わりで男性の名前が(匿名なのに笑)変わる。
同じような悩みを、マシューも持ったことがある…Something About You.
この曲は簡単に言うと婚前交渉が禁止されているカトリックであるマシューが童貞を捨てるか捨てないか。本場では笑える曲らしいけど、正直マシューがかっこよすぎて笑えない(笑)
毎回、観客の女性ひとり(エンジェル)をステージに上げて、マシューはその子に向かって歌う。「緊張すると、僕、体がおっきくなっちゃうんだ」
マークはやっぱりそんなマシューを見て女の子に嫉妬してしまう。女の子の代わりにキスをねだってみたりするものの、キス待ち顔のマークの唇にマシューは仕方ないなって顔で人差し指を当てる。その動作も表情もかっこよすぎる。マークがマシューに惚れるのも仕方ない。
通常では女性を褒めながら「こういうのって、日本では”ゲロかわ”って言うんでしょ?今日の君は、とってもゲロかわだよ」と言うのに
千秋楽では「今日の君は、すっごく……綺麗だよ」と言ったのでhu!と客席が沸いて楽しかった。盛り上げ上手な観客。
曲終わりにマシューが汗を拭いたタオルを女性にプレゼントするのだけど、女性を客席に送ったマークがそれを奪い、そのせいでソウルセンサーの数字がひとつ増えてしまう(笑)
人を批判するな、批判するものは自分も批判される。とメンバーに諭されても「なによそれ(笑)」とあしらう、この時の表情良い。はんって鼻で笑うような。
でも、やっぱりマシューにも咎められると泣き出してしまう。そんな可愛らしい一面が…と思いきや、どんどん顔がぐしゃぐしゃになって「ぷひゅっ」と噴出して泣くからマシューの顔に唾が飛ぶ…というか、飛ばしてる よね?笑
俳優同士の仲の良さが伝わってくるw
結果、バスタオルはちゃんとエンジェルさんの元へ戻りました。

魂を鍛えろ!そんなBody, Mind & Soul.
魂を鍛えろってワードが凄い。熱く鼓舞されている感じがする。ルークらしくてかっこいい!
この曲はとにかく、ノッて楽しむ曲。ミュージカルであんなにコーレスあることってあるの?っていうレベル。
we are the worldを歌うところが、千秋楽はその後空前絶後の~!になっていて観客も沸いていた。

救われない魂は残り33。「33だぁああああああ!33がきたぁぁああああ!!」とマークが騒ぐ。これは、回を追うごとに過剰になる。笑
33という数字が出ると、必ず歌う曲があるということでフアンが装いを変えてくる。意味を説明をしているマシューの横で「33~♪」って客席を煽るフアンが可愛くて楽しい!
この日は、フアンにだけは知らされていなかったけど特別な日。フアンの誕生日のお祝いと、捨て子である彼のために探偵事務所に両親を探してくれるよう依頼していて、その結果が届いた。
このことを知ってから観劇すると「今日は特別なことがある」という説明の時にフアン以外がニヤニヤしているのがわかって楽しい。
しかし、楽しい気分もつかの間、散々に騒いだもののフアンの両親の住所は、墓地…もう亡くなっていた。
心配するメンバーに、フアンはいつも通り明るく答える。自分には最初から家族なんていないんだからと。けれど、その強がりもすぐ崩れてしまう。そんなフアンを「大丈夫だ」と咄嗟に抱き締めたマシューの包容力が素晴らしい。
本当に、素早く抱きしめる。フアンの泣き顔を客席に見せてしまう前に。この人がリーダーなんだ、と思わせてくれる。
そしてこの流れが切ないのは、これまでのフアンが普段とっても明るく陽気でみんなを和ませてくれるムードメーカーだから。そんなフアンが見せた涙だからこそ、こんなにも胸が苦しくなる。
ここで歌われるのはフアンの曲、La Vida Eternal.
最初は歌詞がなかなか聞き取れなかったんだけど、行くたびに聞こえるように。ラテン系のフアンに合う曲調でありながら、歌詞は意外にも暗く、前半では迫る夜闇や死への恐怖が歌われている。
泣き顔で自棄になるように「堂々巡りやわ」と歌うのが印象的。泣いてしまって歌えなくなったフアンの代わりに、歌詞を書いたアブラハムが後半を歌う。
後半の歌詞と他の四人に励まされ、促されてさえアクロバティックに暴れていたフアンが、今は歌うしかないともう一度マイクの前に立つ。
「もし朝までに死ぬことがあっても 僕の魂を神様よろしく」
フアンの思想に触れる歌詞。最後まで歌い切ったフアンは客席に向かって「特にあんた、最高や!」と言うのだけど千秋楽だけは「特にあんた、(さいこうや)」と最後口パクでエアーになっていたw
最後は笑いに昇華してくれるフアンの強さを感じた。
いろんなものを振り切るような顔で歌う松浦フアンのその表情がとっても印象的でした。
あと、この曲は振付も色っぽくて好き。

残り10人。その10という数字に何かを感じると言うマークが歌うEpiphany.
”隠し事”をしている君たちへ、マークからのメッセージ。

まず、この曲は彼の告白から始まる。
マークは、昔からその仕草や気質のせいでいじめられていた。そのいじめの内容は壮絶で、押し倒されて身体中の毛を剃られてしまったと言う。
「そんな時はなるべくオシャレな帽子を買って、いくつも買って」
ここの喋り方がとても好き。
眉毛は鉛筆で描いた。それでも、ダメ。マークは、いじめっ子連中が言うように自分は気持ち悪いやつなんだと自身を否定し、どうして自分だけが違うのかと悩んでいた。
そして、とある日曜日。その日もマークは全身に脱毛クリームを塗りたくられていた。
そんな時、見たこともないやつがいじめっこを蹴散らしてくれた。それがマシューだった。
「彼はぼくの身体を抱きおこし、ぼくの涙を拭いてくれた」
ここの、”抱きおこし”の部分で自分の身体を抱き締めているマークの表情と仕草が、その思い出がどれだけ大切なものなのかを教えてくれる。
マシューに「覚えてる?」と問いかけるのだけど、その時のマシューの「何を?」とでも言いたげなわざとらしい表情がなんとも言えないくらいにかっこいい。ちゃんと覚えてるんだろうなっていうのも伝わってくるのがにくい。
演者や演出意図がどうなのかはわからないけど、真志マシューはマークに向けられている"恋愛感情"に気付いていないのだろう。
マークがゲイであること、誰か好きな人がいること、には気付いている。でも、それが自分だと思っていない。友人として特別に思われてるくらいにしか認識してない。じゃなかったら、軽々しく手の甲にキスなんてできないよ。
無自覚のそういう行動とか、歌っている(告白している)マークを見つめる優しい表情と視線が何よりも罪作りだ。懺悔してほしい。笑

法月マークは、淡々と、とても気丈な話し方をする。
前述の通り帽子をいくつも買うのくだりや、いじめられている内容を話す時の声が、もう気にしてないよ!って言っているような声色で。
でも、マシューに涙を拭いてもらった話をする時の声は笑っているけど泣いているような雰囲気で、なんかもうこっちまで泣きそうになった。
千秋楽ではもっと吹っ切れたような声色だったので、その日のお芝居にもよるのだろうけど、その一歩先に進んだような明るさが法月マークの答えでもあるのかもと思った。マークは、マシューを見て自分を守ってくれる天使「ガーディアンエンジェル」と呼んだ。
しかしマシューは「天使ってのはあっちにいるもんだよ」と空を指さした。だから、マークは本気で宇宙旅行しなくちゃと思ったらしい。

そして、マシューに出会ったことで”ある大切な真実”に気付いたのだという。
それは、自分でも認められなかった、けれど決して恥じることのない自分の真実。
つまり、「自分はゲイでマシューが好き」ということなんだけどこの曲が曲も歌詞も何もかも素敵で。
その事実を告白すれば人に嫌われるし親に捨てられるよという歌詞がコーラスで入ると「I know」と答える。
そんなことはわかってる、でもどうしようもない自分でもどうしていいかわからないっていう寂しげな「I know」。

そうして「ぼくは…」ととうとう切り出すかと思うと「カソリック!」と歌う。
私は決意したように自分はカソリックなんだと宣言するマークを見て泣いた。
僕はカソリック Yes I am!(同性愛を許容しないカソリックだけど)それでも僕はカソリックだしそれを誇りを思う!と自分を否定せずに受け入れ、笑顔で言うマークの強さや、自分の弱い部分を曝け出すことでそこにいる魂を救おうとするその優しさに。
しかし、実際に海外で公演される本作ではこの曲は笑える曲らしい。
これだけ溜めての告白がそれかよ~!知ってるよ~!見るからにゲイなのにカソリックかよ~!というニュアンスとのことで、その辺は宗教観や文化の違いもある。
日本では熱心な宗教の信者というとどことなく悪いイメージがあったりするし、それに熱心なキリスト教信者の方と同じくらいゲイの人にもそうそう出会うことはないし。(隠しているだけかもしれないけど)
確かに、CDで聴いた感じや動画で見られる海外のEpiphanyは笑える雰囲気で言葉はよくわからないけど私も笑ったw

パンフレットに、法月君がその違いに悩み真意を伝えられていないのかと悩んだというようなことが書いてあったけど、今では日本版はそれでいいのだと思っていると。
台本や歌詞を日本語訳してくれた北野さんも他のどの国と比べて一番感動的なEpiphanyになっていると言っていた。
そして、僕はカソリックの"カソリック"の部分は、マークとしてはゲイという言葉に置き換えられるのだと思う。後ろで光る十字架がレインボーになるのはLGBTの象徴カラーだからだろうし。
この”カソリック”は様々な悩めるマイノリティの人やコンプレックスを抱えた人にもあてはめられるようにできてる。
自分に嘘はつかないで、だってそれは誰に恥じることもないんだよ、っていうたくさん悩んできたマークからの励ましの言葉。

歌の最中に、マークがほかの四人ひとりひとりと向き合うところがある。
手を出せば同じように返してくれる、そんな仲間が彼にはいる。ひとりじゃない。
最後はマシューなんだけど、マークがマシューを見る前に大きな体で両腕を広げて待っていてくれてるところ。
フアンに対する時も思ったけど、本当に本当にこの包容力はどこからくるのかと。マークも千秋楽は歌う前から涙ぐんでしまっていたこともあり、腕を広げたマシューに向き合うと更に泣いてしまっていた。
そりゃああんな優しい雰囲気で”愛する人”に腕広げて待たれたら泣いちゃうよね。

私はこの作品の、特にマークにおけるテーマについては近い要素を持つ作品はRENTやbareだと思っている。
けれど明らかに違う点がひとつ。それは、ALTAR BOYZは観客に直接メッセージを投げかけていること。
ライブという設定だからこそそれができて、私たちはマークの語りや歌を目の前で聞いている。常川さんがアフタートークで”第四の壁”の話をしていたらしいけど、まさにそれがないのが特徴。
それに、RENTのエンジェルは彼…彼女自身が天使だけど、マークにはマシューという守護天使がいて仲間がいて、だからこうして自分を肯定し「ひとりぼっちじゃない」「誰に恥じることもない」と歌える。
より等身大で身近に感じられるマーク、アルターボーイの存在は、私たちの背中を直接押してくれている気がする。
だからもし、bareな子たちのように悩んでいる人がいるならぜひこの作品を観てみてほしい。

どの曲も本当に素晴らしいけど、特に大好きなのはこの曲。
歌の最後をファルセットで歌っていたのに、千秋楽で聴いた時は地声で歌い上げていた。法月君は音域が広いけどそれでも少しきつそうに歌う、でもそのギリギリの力強さこそがマークの答えと祈りとメッセージのようで深く胸を打たれた。

そして、そんなマークの告白が終わってもなお4人の魂が救われずにいるので、聖歌集666頁にあるというNumber 918を歌う。
この666という数字やメンバーの顔色からしてもワケ有りな様子。ここでは後ろで演奏しているバンドの方もお芝居してくれるので楽しい(笑)
「マシュー、僕怖い」とマークがマシューの腕に自分の腕を絡めると「大丈夫さ、怖がりだな」とマシューが返してくれてさらには腰に手を添えるのがかっこよすぎて…ほんと…マシュー天然たらし…
「悪魔去れ」「心も魂も雁字搦め」「その皮膚一枚ずつ剥かれ」とか物凄い歌詞が出てくるのに、マシューがシスターマリーがお昼寝の時に歌ってくれたと説明するので初見では混乱したのだけど、つまりはツ ッコんでいいところなんですね。
かっこいいダンスとかっこいい歌と、照明が合わさって迫力があって興奮した。マークが良く通る声で「助けたまえ」って歌ってるのが綺麗。

しかし、曲の最中にマシューが止めに入ってしまう。
そこで告げたのは「この4人のうちの一人は自分」だということ。マシューは、良い契約条件を提示されソロデビューの契約をしてしまっていた。
自分を責めるマシューを止めたのはマーク、優しいな…と思ったら「僕もソロ契約したんだもん!」ということ!おいおい!
ピコ太郎事務所と契約したというマークに真剣に言葉を返すマシューの面白さにくわえ、そこからフアン、ルークもソロ契約をしたことを告げていく雰囲気のツッコミどころ満載。

「僕だけですか」アブラハムの問いかけに、一瞬で空気が変わる。
アブラハムだけが、ソロ契約はしていなかった。もちろんより良い契約条件を提示されながらも、彼はALTAR BOYZの一員であることを選んだ。
彼は、自分がユダヤ人でありながらキリスト教を布教するバンドに所属していることを”事故でしかありえないこと”だと思っていた。
結束力の強いユダヤ人というくくりから一人飛び出し、黒い羊となりながらもこのバンドに所属していた彼は、今までそんな風に考えていたのだ。
それでも、このバンドに残るという気持ちが揺らがなかったのは。
このバンドは自分にとって、ソニーミュージックともピコ太郎事務所とも取引できない大切な、大切な……「家族ってことや」そう返したのはフアンだった。
フアンが告げる”家族”という言葉がどれだけ大きな意味を持つのか、ここまで見届けた観客なら言葉にせずとも知っている。
この物語の最後の台詞は、フアンのこの一言だという感想を見かけて物凄く感動した。この物語が言いたいことはそういうことなんだ。

ラストのI Believe.
創世記の中で、マシューが書いた曲。途中までしか書けていなかった歌詞が、ここで完成する。創世記の時点ではどこまで書けていたのだろうか。
明言されないけれど、私はアブラハムの歌に共鳴するようにひとりずつソロで加わっていくままに、ひとりひとりが完成させていったのだったら嬉しい。

初めて聴いた時、ソウルセンサーがマシューが歌った時にカウントが「0」に切り替わった瞬間が視界に入って思わず涙が出た。
マシューソロ部分のI Believeの力強さと、美しいコーラスと、彼らを照らす真っ白な照明。あまりにも綺麗で、心が洗われていく気がした。

アブラハムユダヤ人。ユダヤ人といえばヴェニスの商人などで描かれているように商魂逞しく利益を求める人物として描かれがちだ。
でも、この作品ではそうじゃない。
例えば人種、例えば同性愛者、例えば移民。例えば、マジョリティ側の人。
それぞれがその枠組みという事情を抱えているけれど、大切なのはその人自身、または自分自身がどうなのかということ。
それは、自身のアイデンティティを捨てることじゃなく、そのままの自分を見つめ、そのままの相手を見つめること。
思えば、この物語には最初から少しずつそのメッセージが散りばめられている。Everybody Fitsにしても、La Vida Eternalにしても、Epiphanyにしても。
人種も見た目も血も育ってきた環境も何もかもが違う、他人であっても。そんなことは壁にはならない。大丈夫、繋がれる愛し合う家族になれる。
そのメッセージが、最後の最後でこの一曲に集約されてくる。
物語としてももちろんすごいし、理屈でない部分で心を動かされる。

「信じてる君を」
言葉で言うほど、簡単じゃない。不確かすぎるし、考えれば考えるだけ答えなんか出ないこと。
けれどアブラハムは金や利益のような目に見えることを捨て、さらには彼らが重んじる血の繋がりを越えて、その不確かなものを、4人を信じ、求め、彼等と歩んでいこうと決めた。
そして、フアン、ルーク、マーク、マシューもまた応えた。
アブラハムがひとり歌うところにひとりずつ集まり、視線を合わせ、手を取り、歌う。
本当に大事なものこそ、目には見えないのかもしれない。けれどそれは、何よりも掛けがえのないもの。

彼らが、ようやく本当の意味で仲間になれた瞬間を見届けて、ここからはメドレーでさよなら!
これがとにかく楽しくて、ミュージカルというとラストナンバーが終わってああ感動した~~で拍手をしながらカテコを見守るという感じだけど、最後にもう一度こんなに楽しい気分にさせてくれるなんて!
こういう終わり方があるんだ!と衝撃的だった。

千秋楽はキャストも観客もノリにノッているという感じで、最高の時間だった。
リズムインミーの「い・れ・て」のところの法月マークを見ていた私のテンションは、今年1最高潮になった瞬間と言っても過言ではない。
Body, Mind & Soulの石川ルークの「終わっても耳から離れないくらいの声を聞かせてくれよな!」という煽りもかっこよかった!
「GOLDって言うからYeah!って言ってくれよな!行くぞ!」からの
「GOLD!」
「Yeah!」
「GOLD!」
「Yeah!」
「LEGACY!」
「Yeah!」
「おい!今LEGACYって言ったのにイエーって言っただろ!」

千秋楽のみで、メドレーが終わった後もう一度We Are the Altar Boyzを歌ってくれた。曲が始まると客席のテンションはMAXで、そこに始まる大山マシューのオクターブ上がった歌声wもちろん他四人も「かい…かい…かい…(高音)」
ふざけ気味の裏声だった大山マシューに対し、法月マークは出る音域なのかかっこよく歌うので客席もhooooo!となり「ギデオンの……(吐息)…ッバイボ~~~!!」
力強い!!かっこいい!!
ハロー東京が「バイバイ東京」になっていたことに、ああもう終わってしまうんだと思うと寂しくていつまでも歌声を聴いていたかった。

しかし、始まりがあれば終わりがあるもので、物凄い熱気と歓声の中で曲も終わりました。

最後の挨拶で「これがGOLDの答えです!!」と言った大山真志は本当にかっこよかったです。
私ですら泣きそうになったので、続投組をずっと見てきた人はもっと込み上げるものがあっただろうと思います。あんな真剣な声と表情で、なんてかっこいいんだろう。
松浦さんのミュージカル初めてで、こんなにも楽しくなるのかと思ったと言ってくれたその表情を見て、ミュージカル好きですっかりこの作品のファンになった私もすごく嬉しかった。
「俺はこの5人で戻ってきたい!」そう言った真志に対し松浦さん常川さん石川くんも「俺も(僕も)この5人で戻ってきたい!」と続くのに対し「わたしもー♡」と続いた法月君が”らしい”感じがして可愛かった。

 

マシュー@大山真志さん
→作中何回、かっこいい!!!と思ったかわからない。
大きな体にハスキーな歌声にあったかい包容力。この人がリーダーなんだなっていうのが雰囲気だけでも伝わってくる。
ふざけたりいじられたり道化にもなれるのに、ソロを歌う時やフアンを抱き締める時、マークのソロを見守る時の表情などなど…かっこよすぎる!!!という面も持ち合わせてる。大山マシューに言えることは、とにかく「ずるい」。わかってないでしょ?そういうところが嫌い、だけど好き!みたいなツンデレ心を持ってしまう。無自覚の優しさがずるい!
あと、I Believeの最後にマシューが入ってきてアーイビリーブ!って歌うところ、完全にコリンズのI'll cover youなんですよね~~~絶対コリンズできるんだよそのおっきな体でエンジェルのことも包み込んでほしい…真志のコリンズ見たいよ…でもまだ若すぎるからあと5年くらい後かな…

マーク@法月康平さん
→初めて法月君を見た時、好みの声から好みの歌声が出てると思った。今回さらに、好みの体型で踊ってる!って感動した。
マークのような役は元々好きではあるけど、だからこそ演者がダメなら絶対に好きになれない。
法月君のお芝居は本当に絶妙な、1ミリ単位のところで私のツボをついてくる。
顔立ちや声質と声圧の関係で気が強そうに思えるんだけど、そこに見え隠れする繊細な表情のバランスがとっても良い。”泣いている人を見るより、泣くのを我慢している人を見る方が辛い”っていうのはこういうことかなと思った。
Qちゃんの時は衣装でわからなかったけど、ものすごーーーーく細くてびっくりした。そして、絶対にエンジェルできるからやろう。法月君のcontactを聴いたら絶対に泣く。

ルーク@石川新太くん
→終わってパンフレット読んでツイッター見て、え、17歳!?と。
歌えて踊れて、本当にルークにしか見えなくて。やんちゃで不良でyeah!みたいな子だと思ったら、意外と素顔は幼くてでも中身はしっかりしてる可愛らしい子でびっくりした。観客の煽りも上手だし、とにかくすごい。役でやってるというわざとらしさがない。9歳でアルターを観て、出たいと思って今舞台に立っている。夢を叶える力のある子。歌声が高いところから低いところまでよく出ていて、The Callingの時なんて綺麗すぎて涙が出た。将来有望すぎる。

フアン@松浦司さん
→ミュージカル初挑戦!?って感じです。ダンスはどうしてもある程度若い頃からやらないとダメな部分があるけど、歌はやっぱり素質だなと思う。
生男では「最初の音」と言われて「最初の音が5個くらい出てきてる」なんて言ってたから相当努力もされたんだろうけど、声は良いし聴いてて不安になることもなかった。
ラビダで「堂々巡りやわ~~」って歌い上げるところ、最初と千秋楽とでは歌い方を変えてきていて、変えていこうとか考えて進化成長しているんだなっていう姿に感動。ラテンノリと関西弁って相性抜群。くしゃってなる笑顔がフアンの陽気さに合っていたからこそ、ラビダでの熱唱もさらに良かった。

アブラハム@常川藍里さん
→初見は、常川さんの歌い上げ方が作品と合ってないんじゃないか?と思った。
でも、色々調べてからの二回目では、真っ直ぐで素直で突き抜けるようなクラシック歌唱が、アブラハムの唯一のユダヤ人であるという色の違いが出ていていいんだ!と納得した。他四人はアメリカンでファンキーなノリを感じる中、ひとり清潔感のある生真面目さが見えて、きっとそこは本人の人柄も出ているんだろうな。
ダンスもバレエの素養があって、その背筋のピンと伸びた姿が常川さんの演じるアブラハムなんだと。控えめに戸惑ったりする表情がとっても魅力的でした。

バンドの皆様も本当にありがとう。素敵だった…。
ちょいちょい挟まれる演技が可愛かった…。

 

挨拶を終えた後も彼等はステージ上で「GOLD!GOLD!」と円になって抱き合ってたり、捌けた後も「GOLD最高!」とか袖の奥で言っているのが客席まで聞こえてきて、なんだかとっても微笑ましくて、今でも思い出すとなんだかあったかい気持ちになる。
彼等もやりきって、楽しかったんだろうなって。

普段、ミュージカルを観て帰るのとは違う充実感があった。
松浦さんが言うように、この作品はおそらく初めて参加する役者よりもずっと見てるファンの方がコーレスのタイミングも盛り上げ方も知ってる。
観客のほとんどが日本人だと思うけど、こんなに盛り上がっているミュージカルなんて観たことがない!
普通は静かにしているのが基本だし、私もうるさくされるのは絶対に嫌だけど、この作品の観客は芝居部分では舞台の基本マナーを守り、必要な時には思い切り盛り上がることのできる人ばかりだった。
ミュージカルとしては特殊で、でも、すごくオフ・ブロードウェイっぽいなって。
まだ学生の頃、とあるバンドの追っかけをしていた頃の感覚を思い出したりもした。

歌舞伎町のど真ん中をスキップしながら帰れそうな、心も体も軽くなったような不思議な感覚。
明日からも頑張ろう!なんて、考えちゃったあたり魂が浄化されたんじゃないかって本気で思った。

これが私の初めての魂浄化体験でした。

また彼らが”この5人で”来日してくれるのを"信じて"待っていることにします!

 

合同公演も楽しみだなあ。

 

2/27 常川さんだけ役名もお名前も書き忘れてしまっていたので修正