Open Sesame!

日々の観劇の感想や感じたこと

2016/12/18 『RENT』20周年記念ツアー 来日公演

 

「RENT」以上に大好きなミュージカルは、もうこの先現れない。

 今までも思っていたことだけど、やっぱりそうだと確信した。

 この作品のパワーは、何度観ても変わらない、色褪せない。

 

今日という日、今この時、そして家族、友人、

自分が誰かに向ける愛情や、自分が受け取る誰かからの優しさ、

それらがどれだけ尊くて大切なものなのか、観るたびに教えてくれる。

 

有名作品だからと何気なくレンタルした映画を観てから、すっかりRENTの虜になり映画もBW版も何回も観た。
日本版にも何回も足を運んだ。
いつか、この作品を英語のまま生で観たい、聴きたい、感じたい、と望んでいた。

 

それが、ようやく叶った!!

原曲は英語だし、もちろんそれに合わせてメロディが作られているから日本語訳で聴くよりも耳馴染みが良いし言葉遊びのリズムが心地良い。

あと、日本版は基本的には日本人(ハーフの方も多いけど)が演じているので、キャストの体格に差がない。
来日版のキャストはやはり体格差や喉の違い(特にコリンズやジョアンヌ)があって、これだなあ~~!とそれだけで感動した。

 

出来る限り字幕を見なくていいように少しだけ英語の勉強もしたけど、もうすでに何回も観ているおかげかほとんど字幕を見ることはなく。
なんて訳されているのかな?って気になって数回チラ見した程度で、あとはもうフィーリングで入ってくる。
曲や作品の持つ力が、言葉以上に伝えてくれる。
というか、ステージを見るのに忙しくてそんな暇もない!笑

 

どの曲ももちろん大好きだけど、特に二幕のHalloween~Good bye love~What you ownまでの流れがとにかく大好き。

まずContactで高まってI’ll Cover Youのリプライズで、コリンズや仲間の想いに涙が出てくる。

けれど、その後にHalloweenでみんなの関係が壊れていってしまう様が、いつだって喧嘩を止めてくれたエンジェルがもういないんだって実感してしまってもっと泣けてしまう。

今回思ったのが、今まで日本版で観ていた時よりもマークとロジャーがより親友っぽく見えたなということ。

(マークがリア充っぽくてロジャーがちょっとなよっとして見えたからかな笑)

 

だから、二人が言い合うのはとても悲しいし「but who Mark are you?」の言葉が突き刺さる。

ミミが死ぬかもしれないとか現実を突き付けたり、マークが孤独から仕事に逃げているだとか散々言い合いした後にロジャーが「I'll call」って言うのが好き。
それでも電話はする。ちゃんと仲間で友達なんだなと思える。
そうして、別れを経てからの「What you own」。

 

日本版を観ている時も、映画を観ていた時も、この歌はなんだかとても印象に残る。心に響く。
理由を問われたら、きっとうまく説明できない。
曲だけで言えば「RENT」の方が好きで、歌詞が特別切ないだとかそういうわけではないのに、どうしてか涙が溢れて止まらない。

 「I'm not alone.」

 「俺は一人じゃない」

 そう言いながら二人が眩しいくらいのライトを浴びて歌う姿に、言葉にはできない何かを感じる。

改めて来日版を観たことで、私はけっこう日本版が好きなんだなと思った。

 

 

英語で上演するものが本物で、日本版を偽物とする気はないけどどこかそんな気がしていた。
けれど、そんなに悪いものでもないなって。

 

私の母国語である日本語だからこそ、ストレートに伝わってくるものがあるのだなと。

 

母国語のニュアンスだから伝わること、わかりやすいこと。そうした環境で観劇できるのは貴重なことでもあると感じました。

 

あと、去年のマークだった村井君の芝居はとても繊細で丁寧だったのだとも。
マークにしては声や表情が堅い印象だったけど、お芝居そのものは、特に二幕は、良かったと思う。

 

そして何より、モーリーンは断然ソニンのモーリーンが好みです。
はっちゃけ具合や客席を殴るような声、そしてコミカルなMooの煽り、小悪魔だけど憎めない、みたいな雰囲気が好きです。

 

さすがに全体的な歌やダンスのクオリティそのものは事務所や役者個人の人気云々が絡みに絡み合う日本版とは違って、平均が高かったけど。
なんというか、某エンジェルの悪夢は一生忘れないと思う。
来日版を観て、ここまでのことを、この若さで(今回カンパニー全体がかなり若い!)やってのける俳優がたくさんいるんだ、
というのを知ってしまったので私の中でさらにRENT出演者へのハードルは上がった(笑)

 

 

Mark:Danny Kornfeld
→ど~~~しても、アンソニー・ラップのイメージが強すぎるんです。
なんだかちょっと冴えない(失礼)だけど、歌うと声がイメージと違ってて、ロックな曲を歌うとかっこいい、みたいな。
今回の方は、アンソニーに比べるとキラキラしていたかなって(笑)
でも、あのセーターとマフラーを身に付けるマークが見られて嬉しかったです。
La Vie Bohemeの時に手を使わずテーブルに飛び乗って横たわったのを見てすげえ…ってなりました。
ジャンプした時にチラッと見えた腹筋がバッキバキに割れていたので、なるほどと納得。

 

Roger:Kaleb Wells
→最初に見た時はなかなかゴツい方だなって思ってたけど、やっぱりいつ見てもロジャーは繊細ですね。
日本版は特に去年堂珍さんが演じていてかーなーり繊細というか弱そうと思っていましたが、正直、今回のロジャーが今まで見た中で一番よわよわでした(笑)
ミミと一緒に死んじゃうんじゃないかとハラハラ。笑
そもそもロジャーってマークやコリンズにぐりぐりやられていじられたりもしているけど、そんな雰囲気が目立ったからでしょうか。
でも、歌は安定しているしロジャーの声で良かったです。

 

Mimi:Skyler Volpe
→背が高くてしっかりした体つきで、これが本場のミミかー!ってちょっと感動しました。
あの、BW版のDVDとほぼ同じ振付の「Out Tonight」が見られたことが嬉しくって嬉しくって。
この曲は本当にテンションが上がります。終わらないで欲しい。
ぼわっとした髪型がキュートで、声はハスキーだけど可愛かった。
そして例のごとく死にそうにはない(笑)

 

Angel:David Merino
→個人的に今回一番好きなキャストです。
演じてて楽しい!って感じのキャピキャピした可愛いエンジェルでした。
若々しいんだけど、やっぱりあのブーツのままでテーブルに飛び乗ったりしていて感動。
エンジェルはこうでなくちゃ!と実感しました。
包容力はちょっと物足りなかったけど、 誰よりもはしゃいで可愛くて、喧嘩の仲裁はいつもやってくれて、そんなエンジェルが死んでしまうからこそ悲しいのだと改めて思った。

 

Collins:Aaron Harrington
→声がコリンズだー!という感動がありました。
日本人とは骨格そのものが違うので出る声も違うなあと。日本版だとにSOLでコリンズが負けそうかも…と思う時があったけど、逆でした。
ATMのコード「ANGEL」を言う時のお芝居が可愛くって好き。

 

Maureen:Katie LaMark
→モーリーンの出番ってこんなに少なかったっけ?となってしまった。ちょっと印象が薄い。
ミッキーの物まねはギリギリ感あって好きだけどw
Mooの煽りもお尻出す時も、もっとはっちゃけてもいいのになあって思った。

 

Joanne:Jasmine Easler
→安定のジョアンヌ。声といい体型といい良い感じで嬉しかった。
日本版のキャストも上手な人が多いジョアンヌ。
「Tango: Maureen」好きだなあ。
歌がうまくて声量もあったので、マークに負けないというか勝ってる!ジョアンヌはこうでなくちゃ!

 

Benny:Christian Thompson
→思ったより小柄だったのでびっくり。
でも、私はやっぱりベニーが結構好きなんだよなあというか憎めないなというのを実感しました。
喧嘩の仲裁したり、みんなと一緒に居たがったり。
譲れないこだわりを持って生きる彼等の仲でベニーの選択は浮いていたのだろうけど、ベニーにはベニーなりのこだわりや夢があるんだ、と私は思う。

 

ウェイター
→ウェイター役の彼の、レギパン?的なものを履いた脚があまりにセクシーで気になってしまったので書き残しておく。笑

 

 


同性愛者、HIV、ドラッグ…夢を追い求め、ボヘミアンな生き方を望む彼等。
言ってしまえば、世間的にネガティブな要素を持った人物ばかり。
けれど、この作品を観ている間は私はそんなことを忘れてしまう。
とにかくパワフルで、病気だとか依存症だとかセクシャルマイノリティだとか、はたまた人種の違いだとかそんなものを吹き飛ばすエネルギーを彼らから感じるから。

 

現実を確かに生きていて、今のところ大きな病気をしたこともなく平凡に生きている私よりもずっと、彼らは一生懸命に生きている。
特に、セクシャルな部分に関しては同性愛だろうが異性愛だろうがなんの違いもなく、ただ人を愛するという自然な、そして大切なこととして描かれている。
作中、最も涙を誘うのはエンジェルのお葬式のシーンで、コリンズの愛溢れる優しくも悲しい歌声に客席も泣いている人がいっぱいいるけど、その時、私たちは「二人がゲイのカップルだから泣いている」わけではないし、ただただ愛する二人の別れに、エンジェルという尊い人の死に、涙を流しているだけ。
そこには押し付けがましい説教じみたメッセージはなにもない。
それは、ジョナサン・ラーソン自身が余計な色眼鏡無しに彼等を見ていたからで、そうでなければこんな作品を作ることができるわけない。

 

改めて、彼が最高の作品をこの世に残してくれたことに、感謝したい。

 

私は、博愛主義というわけではないし、好き嫌いはもちろんある。
それに、やっぱり狭い島国で、人生のほとんどを日本人と接して生きているので日本人以外の方に話しかけられたりした時はびっくりするし、どんなに綺麗事を言っても、違う国で暮らしている日本人以外の方と打ち解けるのはきっと時間がかかると思う。
でも、そういう感情があるからこそジョナサン・ラーソンの視点がどれだけ素晴らしいかわかる。
だから、時間がかかったとしても、自分に優しく接してくれた人にはちゃんとその優しさを返したい。

 

それはもちろん、人種という問題だけではなく。誰かと接するうえで大切にしていきたいこと。

 

描かれている時代としては、私が生まれた頃の話だから少し古いのかもしれない。
けど、一番大事なものはきっとこの先もずっと変わらない。
言葉では上手く説明できないものを、この作品は教えてくれた。

 

RENTという作品が大好き。本当に本当に、出会えてよかった。